時刻はもう夕飯時に差し掛かるかどうかという所。
今オレは商店街を歩いており、既に遠坂とは別れていた。
さて、話は少し前に遡る。




「これが、今回起こる筈の聖杯戦争の顛末なんだ」

可能な限りは説明した。と言っても、オレはこの世界の住人じゃない事。少なくとも、精神はこの世界の『七枷陣』とは別物だという事。俺の住む世界においては、この世界がFateというゲーム名で発売されていて、今回の聖杯戦争の時期・・・1月終わり頃から2月の1週目くらいまでの出来事を全て把握しているという事を伝えた。
当初、遠坂は―――
「平行世界の干渉・・・?時空転移の亜種・・・!?遠坂の悲願をまるまるコイツが・・・?ふ、ふざけんじゃないわよーーー!!!」
ってな感じで、がぁーっと激昂された。ちなみにこの台詞、オレが独自で柔らかく修正し短くまとめた物である事を付け加えさせて貰う。本来の台詞をそのまま載せるとピー音だらけで読めた物ではないからね。
両耳を手でガードしつつ遠坂が大人しくなるのを見計らって、今回の聖杯はアンリマユに汚染されていて、真っ当な願いは叶わない事、溢れ出せばこの公園で起きた大火災と同等、下手をすれば冬木市を越えて県単位で焦土と化すかも知れないことも伝えた。だけど、言えたのはそれだけだった。参加メンバーに関しては説明していない。というか、教えたくないのだ。何故なら―――――


―――――何の力も無いオレには、無関係を決め込むしか道は無かったのだから。







『Fate/The impossible world』





「そう、じゃあ貴方が知っている・・・ううん、『知った』聖杯戦争に参加するメンバーを教えてくれる?」

「・・・悪いけど、それを教えるわけにはいかない」

「何でよ、聖杯戦争の概略をそこまで言えたならマスターやサーヴァントの情報くらい―――」

「―――シュレディンガーの猫」

「・・・不確定性原理?それが一体―――あっ」

中々に聡明な遠坂は直ぐに気付いてくれたようだ。つまり、あらゆる可能性のある世界で、未来の出来事を本来世界の『外側』にいるオレが伝える。そうすることによって、可能性の幅は収縮し、それらはやがて収束して、未来が決定づけられてしまう。そこまでならまだいい。それだけなら、オレも出し渋りなんてしない。
起こりうる出来事を話す→可能性は基本的に出来事に沿って収縮する→結果、話した出来事に収束して帰結する。
これが大原則。これが絶対であるなら、オレは遠坂に一番マシなエンディングの状況を洗いざらい話して、後はTVのブラウン管の如く、それこそオレの居た世界と同じようにPCの前にいる傍観者の如く徹すればいい。それでオレの命も健康無事で万々歳、死ぬ人間も少なくて良いことずくめ。


――――ハ、そんな都合の良い話、あるわけねーだろ。


考えても見ろ。可能性が収縮されるからと言って、その出来事に帰結しやすいからといって果たしてその通りになるのか?答えは・・・最終的にNO。YESだけど―――NOなんだ。
収束した結果、一度でも起こる出来事に著しく逸脱した結果が出たら、その瞬間にその結末は御破算だ。どう転ぶのか、どういう結末になるのか一切不明になる。つまりはそう言うこと。
足下が真っ暗になる。でも渡らなければならない。その理不尽。落ちれば何処まであるのか分からない奈落に身を堕とす平均台を―――15cmあるか無いかの平均台の幅を!暗闇で!踏み場の先が見えなくて!それでも進めと言うのか!無理だ。無理無駄無謀無策無為無我。そんな状況になるのがおれはとても怖い。・・・怖いんだ。
臆病だとか根性無しだとか、罵倒する輩もいるだろう。だけど、そんなやつが居ればオレは絶対、「バカかお前?」と言い返すだろう。そんな無責任な罵倒は、当事者じゃないやつの身勝手な妄言だ。どうしようもない程の愚者、重箱の隅を突くような批判をするだけしか能のない国会議員のよう。
そりゃ、出来ればオレも遠坂に協力はしたい。でもオレは顛末を知ってると言うだけで、何の力もない一般人だ。魔術なんて使えるわけないし、当然サーヴァントとの肉弾戦なんて論外だ。関わって、先の見えない可能性に辿り着いて、それで結果的に命を落とす。そんなの嫌だ、御免だ、誰も死にたいやつなんていない。オレだって死にたくない。
そんな事を考えずに突っ切れた事を言えるやつなんて、傍観者か死にたがり屋か―――


―――心が壊れた異常者か。そう、まだ合ってないけど、きっとこの世界にも居るだろう、衛宮士郎のような。


「言いたい事が分かって貰えて何より。つまり、先にある不確定を伝えて未来をほぼ決定させる事が出来るけど、もし予想外の出来事で伝えた未来と違ってしまえば、それから先は判断の妨げにしかならなくなる。そうなったら目も当てられないと思うけど」

「・・・確かに、七枷君の言う事にも一理あるわね」

「―――まぁ、ここまでは一応可能性としてある事実だけど建前」

「・・・ふーん―――本音は?」

ギリ・・・。奥歯を苦々しく噛みしめる。身勝手な自分主義に嫌気が差す。でも、それが一般人として正しい在り方なのが分かってるから余計に自己嫌悪する。

「本音・・・・・・は」

―――それでも、オレは自分の意志を伝えなければならなかった。いや、伝えたかった。言う必要のない無駄な物・・・遠坂名言にある、心の贅肉というやつ。

「オレは、結末を知っているだけの非力な人間だ。戦える力なんて何もない。だから可能な限り聖杯戦争に関わりを持ちたくないんだ。オレ、死にたくないから・・・だから」

話せない、ゴメンと。オレは頭を下げた。

「―――――」

目を閉じて、遠坂は考えに耽っているようだった。色々考えているのだろう、本当に信用出来るのかとか、本当なら聖杯戦争を有利に進められるとか。多分。
きっと魔術師なら、オレの事情なんて知ったこっちゃないし問答無用で記憶操作して全て吐かせるんだろう。遠坂は・・・遠坂も、そうなんだろうか。Fateの遠坂はいつも正々堂々とした展開を貫いてきた。でも、いつもそうだとは言えないだろう。シュレディンガーの猫の話と同じく、絶対に正々堂々とする保証なんて無い。

「オレだって、力があれば遠坂さんに協力したいけど、オレは何にもなくて・・・でも死にたくないから無関係でいる事しか出来なくて・・・それでも、オレは―――」

「―――もういい」

はぁ、と溜め息をついて遠坂が言葉を遮った。

「ハッキリ言うけど、それだけ聞いてもまだ納得がいかない点は多い。聖杯戦争の起こりうるだろう事象も本当に起こるか分からない。でも―――」

言葉が途切れ、じっとオレを見つめて、

「貴方がそんなに必死な顔って、初めて見るから。それに、そんなに身勝手な自分が嫌いですって顔も。演技って訳でも無さそうだし、きっと真実なのね。七枷君が言う事は」

やれやれと苦笑いを浮かべ、

「私としても、只の一般人を聖杯戦争に巻き込むのは出来るだけ避けたいわ。依怙贔屓だけど、クラスメイトなら尚更ね」

魔術師としては、心の贅肉もいいとこだけど。と付け加えまた苦笑する。

「貴方が知ってる先の出来事に興味はあるけど、無理に聞くつもりはないわ。そんな事聞かなくったって、私が勝利してみせるわ。聖杯戦争を。そして聖杯がそんな物なら二度と顕現出来ないようにたたき壊すのみよ。ま、今回のことは特別に・・・ほんとーーーに特別に見逃してあげる。感謝しなさいよ」

「・・・いいの?」

「見逃して欲しいんでしょ?まぁ、その代わりに大きな貸しが1つ出来たしそれで満足してあげるわ」

―――うわ、マジデスカ?

「えっと、ちなみに・・・その借りは金銭的に換算してどれくらいの価値なんでしょうかね、トオサカサン?」

「――――フフ」

にやそ。そう、その表情は『にやり』ではなく『にやそ』がピッタリと当てはまる。邪悪さにおいて。―――ぞわわわわっ!

「イエ、ダイタイリカイシマシタノデ、コタエナクテイイデスヨ?」

オレは、自分の命と引き替えに、これからの物的財産を失ったのかも知れない・・・。

「分かってると思うけど、他の魔術師に勘付かれないようにしなさいね。私が非常に特例なだけよ、他の魔術師に貴方が全事象を知っていると知ったら問答無用で頭の中を弄られて人として終わるわ。間違いなく」

「うん・・・ホントに・・・ホントにゴメン遠坂さん。ホントに・・・ありがとう」







話はそこまで。気付けば時間もそこそこ遅くなっていたから今日はお開きと相成った。
遠坂に帰り際、

「まぁ、どうしようもなく行き詰まったりしたら少し先の状況を吐いて貰うかもね」

と、素敵な笑顔で脅迫お願いされたけど。
とぼとぼと、商店街を歩き渡る。・・・これでいい。不確定な運命でどう転ぶか分からないけど、それなら距離を空けて傍観に徹すればいい。関わらずに離れれば少なくとも・・・大丈夫な筈だ。
それからどうするか。元の世界に帰る事なんて出来っこないし、それほど未練もない。じゃあこの世界でなんとか上手いこと折り合いを付けて生きていくかな・・・。
そうやって考えに耽っていたせいか、不意に目の前が薄暗くなって―――


―――ドン!


「あいたっ!」

逆方向に進んでいた目の前の誰かにぶつかってしまい、オレは転けてしまった。

「お―――っと、わりぃな少年。ぶつかっちまって。ちょっと急いでたんでな。だがおめぇもちゃんと前見て歩けよ、危ねぇぞ?」

あちゃ〜、不味った。あぁ、そんなことより謝んないと。

「あ・・・っと、ごめんなさい。オレもちょっとぼーっとしてまして・・・」

「あぁ〜、別にいいさ。ホレ、立てっか?」

「あぁはい、ありがとうござ―――」





――――――――――――――え?





「あん?どした少年?鳩が豆マシンガン食らったような顔して」





――――――――――――――そんな





「・・・少年?・・・お〜〜い、指何本か見えっか〜?」





――――――――――――――なんで!?





「ら・・・・・・ラン・・・・・・っ」





なんでここに、黒いジーパンはいてランニングシャツを羽織ったランサーが、ここに居るんだ!?

「んあ?らん?」

あ、しまった!名前全部言ってはいないけど不味い。非常に不味い。不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い!!!誤魔化さないと・・・何とか誤魔化さないと・・・・・・っ!



―――――■んじゃう。・・・■される。



「ら・・・らん・・・・・・らん・・・・・・・・・ランニングシャツ?」

く、苦しい。これまたひじょーーーに苦しい。山田君、みんなの座布団全部持って行きなさいってなくらい苦しい。

「んん?・・・おぉ、コレね。寒そうだってか?」

奇跡的だ。あんな怪しさ爆裂な返しをまともに受けてくれた。ありがたい・・・この好機、絶対逃すものか・・・っ!

「え、えぇまぁかなり。えっと・・・その格好だと風邪引きそうですけど?」

ランサーは「―――ハっ」と鼻で笑い、

「甘く見るな、一般人とは鍛え方が違う。この程度の気温で風邪なんて引くわけねぇだろ」

いやあの・・・商店街の日付と現時刻と気温を教えてくれる電光掲示板には『本日の気温、2℃』って表示してるんですけど。というか、冷蔵庫の中並なんですけど。
オレはアンタが英霊だって事知ってるから、内心そんなに驚かないけど普通の人から見たら多分ドン引きすると思うんですがどうだろうか。
ランサーは何も言わないオレにふふん、と息巻いて(表情から察するに多分、凄いなぁと感心してるって思ってるんだろうな)

「この位ならパンツ一丁でも野宿だってできるぜ」

「それは確実に公的機関にタイーホされるから止めとき」

あ、つい関西弁で突っ込んでしまった。




「その子の言うとおりです。何を血迷った事を考えているのですか、ランサー」




不意に、ランサーの背後から―――




「おうバゼット。メシもう買ったのか?」




少し赤みのあるこげ茶色のスーツ。




「滞りなく。・・・レジ待ちの長さに革手袋を嵌めそうになりましたが何とか抑えました」




ワインレッドのネクタイ、ショートヘア、そして瞳。




「おぉ〜こわっ。お前さんこそ何を血迷った事考えてんだか」




封印指定狩り。武闘派魔術使い。男装の麗人。




「私は思っただけで実行していません。貴方は実行しようと考えていた。あの目はマジでした。間違いないですね」




そう、考えてみればそれも当然。ランサーの本来の主、バゼット・フラガ・マクレミッツ。彼女が傍にいて当然の事なのだ。



「それでランサー、この少年は一体誰なんですか?」

「あぁ、ちょっとよそ見してたらぶつかっちまったってだけだ」

「そうですか・・・えーと・・・」

「あ、七枷陣です」

あ゛、つい名前を言ってしまった。関わりたくないのに何で喋るかなオレ!

「あ、ご丁寧にどうも陣君。私はバゼットと言います。それよりもすみませんでした、コレの管理が些か行き届いて無くてご迷惑を」

「コレ扱いかよ・・・。オレは・・・まぁランサーって呼んでくれればいい。ヨロシクな少年」

「いえその、オレがぼーっとしてたのが悪いんで別に良いですよ」

それにしても、周りが買い物客・・・つまりおばちゃん連中ばっかしの中で、ドン引き確定な季節外れの出で立ちとエリートっぽいスーツじゃかなり浮いてるよなぁ・・・。

「まぁま、あのおにいちゃんたちおかしぃよ?ぱぁぱみたいなおようふくきてたり、はんそでシャツきてたりしてる〜。さむくないのかな〜?」

「こらっ、ちぃちゃん。あの3人を見ちゃいけませんっ!」

案の定、典型的な幼女に指差され系のドン引きイベントが数メートル先で起きてますよ。てかあのお母さん、オレまで同類付けしてくれやがりましたよ。

「―――――」

「―――――」

「―――――」

・・・・・・。
あの幼女のせいでこのままはい、さようならって訳にもいかなくなってしまった。微妙な空気が流れている。ダレカタスケテ。

「えーと・・・ですね。この格好はそんなに奇異に見られるのでしょうか?」

と、バゼットが気まずそうにオレを見て話してきた。

「え・・・っとですね。商店街でそのスーツは結構微妙だと思います。オフィス街なら違和感ないでしょうけども」

むぅ、と口元に手を当てて思案に耽るバゼット。だがすぐにそれも解いた。

「私が手持ちにある服はこれと似たようなものしかありませんし、滞在中は我慢するしか無いでしょうね」

「滞在・・・?冬木には旅行か何か・・・なわけないですよね?スーツですし」

理由は当然知ってるが、何も知らなければそう返すのが普通だ。話合わせのためにオレは一芝居打つ事にした。

「えぇ、まぁ・・・出張みたいなものです。彼はその仕事のフォローで付いてきて貰いました」

「あ、成る程。結構いるんですかここには?」

「そう・・・ですね。多分1ヶ月くらい滞在するかと」

「大変ですねぇ、出張だったら食事もままならないでしょ?・・・って、そう言えばご飯がどうとか言ってましたけど」

「あぁ、これの事ですか?」

ガサ・・・と、左手に持っていた買い物袋――コンビニマートゴトー・・・ローカルな自営業コンビニかな――を持ち上げた。

「あぁ、コンビニ弁当ですか?」

「いえ、お弁当だと容器が嵩張りますから―――」

と、買い物袋の中を見せてくれたバゼット。そこには―――


「・・・ハンバーガー?」


包み紙にくるまった小さな球状の物体。レンジでチンして温めてから食べても良し、勿論そのまま食べても良し。大手スーパーでも売ってそうなその物体・・・そう、ハンバーガーだった。お?良く見たらチーズバーガー・・・てりやきバーガーもある。もっと良く見たら、ハンバーガーチーズバーガーてりやきバーガーハンバーガーチーズバーガーてりやきバーガーハン―――

「ってハンバーガーばっかやん!!」

また思わず突っ込んでしまった。

「・・・?いけませんか?簡単に栄養摂取出来て食後のゴミも嵩張りにくいのでこれは結構気に入っているんですが」

「・・・・・・うぇ」

想像するだけで激しく胃がもたれそう。ハンバーガーばっかってそれ何か間違ってへんか?

「えっと、簡単な食事ならウィダーインゼリーとかもありますけど飲まないんですか?あれの方が簡単に摂取は出来ると思いますけど。まぁ、そればっかしも良くは無いんですが」

「確かに時間、効率共にあちらの方が簡単ではある事は認めます。しかし、ゼリーをパック詰めし、あまつさえ押し潰して飲むなど邪道です。ゼリー及びプリンの類はスプーンですくって食べる以外、私は認めませんのでアレは却下です」

ア、ソウデスカ。
当たり障り無く会話(?)していると、今まで黙ってたランサーが―――

「プッ・・・クッククク。いや、中々少年との会話楽しんでるじゃねぇかバゼット。意外だぜ。あれか?買い物ついでにスッキリしてきたから上機嫌なのか?」

ニヤニヤと何やら嫌な予感を彷彿とさせる発言を宣った。

「えっと、ランサーさん、何の事を言ってるんでしょうか?」

「あぁ、あそこ・・・コンビニ?に行ったのはメシだけじゃねぇ、あそこには確か頼めば貸してくれるんだろ?」

えっとですね、なんかざわざわ来ましたよ・・・?次の瞬間が何となく想像出来るオレが来ましたよ?

「つまりはだ、そいつはメシ買うついでにショ―――」



―――――ガオン!!!!


―――――バキャ!!!!


―――――グシャ!!!!


ヒュ―――――ドグォ!!!!



次の瞬間、時間が吹っ飛んで結果だけが残ったかのようにランサーが地面に蹲ってキラキラと何かを吐いていた。・・・・・・胃液?
そしてくるりとこちらを見据えるバゼット女史。あれ?何時の間に笑いのファントムマスクを被っているンデスカ何カ怖イデスヨハハハハ。ソレニ両手ガ血デ濡レソボッテイマスヨモット怖イデスヨHAHAHAHA・・・!



「――――――貴方は何も聞かなかった。・・・良いですね?」



コクコクコクコク!!!

「―――よろしい」

あ、何とか雰囲気が一段落した感じ。そろそろ別れを告げても良さそうだ。

「・・・っと、そ、それじゃオレそろそろ帰らないといけないんで。こ、これで失礼しますね」

「あ、はいそうですね。時間も遅いですし、気をつけて」

「じゃーな少年、縁が有ったらまた会おうや」

うわっ!ランサーもう復活してるし。しかもダメージ無さそう。・・・英霊だからそんなものなんだろうか?アーチャーやセイバー辺りからクレーム来そうな印象だけど。

「あ、はは・・・は。えぇ、まぁ縁が有ればまた。ランサーさん、バゼットさん、さようなら」

またなんて有って欲しくないんだけどなぁ。これ以上の介入は不味いだろうし。でも、滞在するから商店街なんかで偶然会う可能性はゼロじゃない・・・。ま、会ったら会ったで適当に挨拶して終わりだろう。きっと。オレは、魔術なんて使えない一般人なんだから。








「・・・ただいまぁ」

今日だけでどれだけ疲れただろう。でも我が家に帰ってこれた。それだけで安堵した。

「あーおかえり陣。なんやもう帰って来たん?随分早いねぇ」

「まぁね。遠坂さんの買い物に付き合ってたかられただけだし。その後はてきとーに本屋でぶらぶらしただけ。・・・あ〜、今日のご飯何?」

「今日はエビフライカレーやで。・・・なんやのん、おもろないな〜。エビフライにソースかけとく?」

「あんな〜おもろないって・・・何言うてんの?別に変わった事なんてあらへんよ。あ〜カレーのルー付けて食うからソースいらん。つかかけんな。ってまたカレーなんか?もう2日連続やん、いい加減飽きてんけど」

味が変わるからカレーにソースは好きくない。それが美味しいって言うヤツの味覚を疑うね。現状は目の前にいる母親に対してな。

「カレーにソース付けんの美味しいんよー?それにそう言わんと〜。作りすぎたからしゃーないやん。・・・あ、もしかして陣さー、母さんに隠してもしかして〜」

「んあ?・・・何ぃよ?」

グッ。・・・人差し指と中指の間に親指を差し込みニヤニヤしている我がふぁっきんまざー、七枷七海(ななかせななみ)30ピー歳。今回でようやく名前初出し。どうでもいいけど。


「・・・真っ昼間からキメて来たん?」


「死ね!!!」





精神的に更に疲れたけど、逆にいつも通りの日常だって事を教えてくれたような気がして、心の中で母さんに密かに感謝した事はまぁ、ここだけの秘密・・・って事で。


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