自己封印・暗黒神殿
オレが叫ぶのとほぼ同時に、それは外された。外に晒されたのは、開放した者を見た瞬間視線を合わせずとも対象を石化させてしまう禁忌の魔眼。名を、キュベレイという。
「くそっ!」
だが、その魔眼も予め知っていて尚且つ開放者を見なければ石化は取りあえず免れる。・・・辛うじて、全員目線を合わせずに済んだので助かったが、ライダーに対して殆ど無防備になってしまった。だが、敵に目を向けようものなら問答無用で行動不能にされてしまう。・・・何とも厄介極まりない。
「ぐっ!・・・この程度で私が怯むものか!やああああ!!!」
と、セイバーが単身ライダーに挑んでいく。・・・そう言えば、対魔力と魔力の高さで取りあえずセイバーは石化を免れるんだったっけ。
「このキュベレイを舐めて貰っては困る。第一、やせ我慢も良いところですね。先程とは速さも力強さも無くガタ落ち。・・・見る影も無いですね、セイバー?」
ニヤリ、と不敵に笑みを浮かべてライダーはセイバーと剣戟を再開する。が、魔眼の影響で全能力が1ランクダウンしたセイバーでは、ライダーを拿捕する所かまともに打ち合う事ですら骨が折れる。すぐに劣勢に追いやられてしまう。
「ぐっ!!」
「は・・・はは・・・あはははは!いいぞライダー、衛宮達の殆どを身動き取れなくした事は褒めてやる!さぁ、一気に宝具でトドメを刺してやれ!」
と、その命令通りにセイバーをオレ達のいる方へ弾き飛ばすと同時に、釘剣で首をかき切り、血が噴き出す。その血は、意志があるかのように空中であの歪な魔法陣を浮かび上がらせて―――
「ま、またベルレフォーンを撃つ気なの!?」
「ど、どうする?このままじゃ抵抗出来ずにやられちまうぞ!」
「・・・ちっ!」
「くっ!こうなったら私の剣を開放して―――」
「待って!セイバーの宝具って滅茶苦茶魔力食うんでしょ?本調子じゃないのに打って倒せなかったらお終いよ!」
「しかしそんな事を言って今倒されれば本末転倒です!やはりここは―――」
「セイバー、宝具は使わなくても良いよ。・・・ここもオレが何とかする」
一枚のカードを取り出して、オレはセイバーに待ったをかける。
「し、しかしジン!今度は偏向・・・と言いましたか?あのカードは使えませんよ!魔眼を開放したライダー相手に、貴方が真正面から向き合うのは自殺行為だ!」
「・・・偏向は使わない。取りあえず、これ使えば何とかなるよ一応」
でも、何となくこのカードの特性を感じ取ったオレは、あまりいい気がしない。
「・・・何かこれ使った後でだるい事が起こる予感が満載なのが嫌すぎるけどね」
「騎英の―――」
そうこうするうちに、ライダーがまたベルレフォーンを撃とうとしている。・・・迷ってる暇も無いか・・・っ!
「えぇい、ままよ!・・・・・・『時間停止』!時よ、止まれぇぇ!!」
刹那、時間は・・・・・・止まった。全ての行動物は静止し、動くモノなど一切ない。いや、1つだけ例外があったな。オレこと七枷陣。オレだけは、この静止した時の中を動く事が出来る。
「さて、時間は少ない。さっさとキメにかかろう」
何となく、そう予感する。きっと、止めていられる時間はそう多くない。早く済まさないとオレがやばい。視線を前に向き直して、オレは走る。ライダーの顔が視界に入ったが、如何にキュベレイと言えども、時間が止まってる間は石化効果は発動しない。そのままライダーの横を通り過ぎる。・・・ここまでで5秒。
ズグン!
「―――ぎっ!」
予感は的中した。一気に魔力が持って行かれる。多分、停止状態の維持として5秒ごとに魔力を吸い上げるのだろう。
「急ごう・・・」
急いで歩を進める。・・・オレの目標は、当然マスター。間桐慎二だった。
「このワカメが・・・手こずらせやがって」
取りあえず、にやけ面で止まったままの顔面に思いっきり拳を3発程食らわせる。それからボディ・・・厳密には鳩尾に4発、思いっきり振りかぶった金的1発。後は良く飛ぶようにと、ヤクザキックモドキを3発ほど食らわせる。
「後は・・・これを没収っと」
右手に持っている本を奪って、ミッションコンプリート。・・・そして、ここまでで10秒。
ズグン!
「ぐっ!!―――そして、時は動き出す・・・ってか?」
時間停止を―――――解除、した。
「おぶぎゃぐぅぅぅぅ!!??」
時間を止めていた時の攻撃によって与えたダメージを、慎二は一斉に食らった。面白いくらいに後方へ吹き飛ばされる。
「フォ―――。・・・な!?」
ライダーから驚きの声が上がる。・・・それも当然。ベルレフォーンの魔法陣がかき消され、更には裸眼であった筈の顔にブレーカーゴルゴーンの封印が再度施されていたのだから。
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・!」
息が切れた。予想以上に魔力を持って行かれたようだ。・・・身体がどうしようもなくだるい。でも、休む暇は無い!オレの予想が正しければ―――!
「ライダァァァーー!!!」
奪い取った本を強く握りしめ、オレは叫ぶ。・・・頼む、成功してくれ―――っ!
「他者封印・鮮血神殿を解除しろぉぉぉ!!!」
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