「って、七枷君!?いつの間にあんな所に・・・・・・!」

「あ、あれ・・・さっきまでオレの隣に七枷がいたのに!?」

驚くのも無理はない。2人から見れば瞬間移動したように見えるのだから。実際には静止した時間の中を移動していたわけだが。

「・・・・・・」

ライダーは沈黙を保ったまま、微動だにしない。セイバーもアーチャーも、ある種の違和感を拭えない為、攻撃に移れない。沈黙の時が流れる。

「(頼む、オレの推測よ・・・当たってくれ―――!)」

必死の思いで祈る陣の願いは、果たして―――――








「!―――空が・・・」

「青色・・・・・・に・・・」

遠坂と衛宮の呟きが、沈黙した空間に響き渡る。それとほぼ同時に、本がボォォォ・・・っと、淡く光った。

「―――――やった―――」

―――成った。そう・・・・・・成ったのだ。あの吐き気を催す甘い空気も、視界を真紅に染める空間も、全て消え去り、毎日見飽きている青い青い、透き通るような空が、眩しい白い太陽が―――再び舞い降りたのだ。

「やはり、空は青い方が良いものですね」

「・・・ふむ、未熟なりに成果を上げたか」

剣と弓の英霊も、煉獄の解放に少なからず安堵していた。

自然と、片方の手にある本ともう片方の何もない掌を握りしめて拳を作り、ガッツポーズを作る。上手く行った。賭けの勝利が確定した。自分の予想が当たってホッとした。色々な思考もあるが、何よりも最悪な被害が出る前に間に合った事にオレは歓喜した。



「―――やったぞ―――――っ!!」



悪夢の時間は、もう、終わり。紅い搾取の牢獄は―――――無へと還った。






『Fate/The impossible world』






「あ・・・・・・」

ぐらり。足下がよろける。だるさ全開なのについ興奮して動いたせいだろう。・・・げ、ちょっと・・・やばい・・・かも。

「七枷君!?」

「七枷!」

目眩を覚えて、オレは倒れてしまうが、

「えっ?」

「いっ?」

その前に、瞬時に動いたライダーに抱き止められた。

「大丈夫ですか、マスター」

「・・・はい?」

ライダーは顔をこちらに向けたまま、そう言った。

「・・・・・・Me?(オレ?)」

「何故英語なのか分かりませんが・・・Yes、と答えれば良いのでしょうか?」

「あ〜・・・何となく予想はしてたんですけど、偽臣の書(コレ)って命令権だけじゃなくてマスター権まで移譲されるのかな?」

「そのようですね、その本を持つ者が私のマスターと言うことになっています」

あ、やっぱし?





「―――で?いつまでそうやってるつもりなのかしら、陣?」





と、外野から青筋が立ったような声が飛んだ。・・・言われてみれば、ライダーに抱き止められたまんまだ。ライダーの手を借りて何とか立ち上がる。・・・まだ結構だるいけど。

「デレデレしちゃってまぁ・・・」

「い、いや別にデレデレなんてしてるつもりは無いんですけど」

「―――どうだか」

フン!とそっぽを向かれる遠坂。つか、何がお気に召さないのだろうか?別に彼氏彼女な関係でもあるまいに。・・・何かそう反論したらガンドられるか宝石投げつけられる気がするので言わないけど。

「マスター権が移譲したということは、もう敵対する意志はないのですねライダー?」

「えぇ、その通りですセイバー。・・・尤も、そちらが今のマスターに危害を加えるというのなら話は別ですが」

「―――ほう、私達がジンに危害を加えると?面白い冗談ですねライダー・・・」

「今は聖杯戦争中です。裏切り行為などざらにありますからね。・・・貴方もその例に含まれる可能性は充分ありそうですし」

「ふ、ふふふ。騎士に向かって裏切り行為をするだろうと宣うとは、本当に面白いですねライダー。ついつい首を刎ねたくなりそうです」

「あの〜、早々に喧嘩を売らないで。そして買おうともしないでクダサイ2人共・・・」



「う・・・ぐぅぅ・・・・・・」

と、呻き声が少し離れた場所で聞こえた。慎二だ。

「な・・・なんだこれ?何で結界が解除されてるんだよ?・・・おいライダー!どういうことだよこれは!!」

慎二の問いかけに、ライダーは答えない。マスターで無くなったならば答える義理も義務もないと言うことか。

「答えろよライダー!マスターである僕の質問にすら答えられないのかこのグズ!」

「貴方はもう私のマスターではありません。答える義務は無いのですが何か?」

「・・・何だって?」

ヒクヒク、と頬を引きつらせる慎二は、思い出したように自分の右手を見る。・・・無い。ついさっきまで持っていた質量が。あの本・・・偽臣の書が。

「探し物はこっちにあるけど?」

オレは左手に持ってるそれを軽く振って離れた慎二にその存在を認識させた。

「な・・・何でお前が僕の本を持ってるんだよ!ライダー、そいつから本を奪い返せ!それは僕の物なんだぞ!!」

ライダーは動かない。理由はさっき言った通り。

「・・・・・・っ!ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう!!!何でだ、何で僕ばっかりがこんな目に遭うんだよ!何で僕の思い通りにならないんだくそおおおお!!!」

倒れたまま、地面をダン!ダン!と慎二は殴りつける。癇癪を起こした子供のように、それは見てる者を呆れさせる幼稚な主張だった。

「それもこれもみんな桜のせいだ!あんなライダーみたいな役立たずを召喚した時点からが、そもそもケチの付け初めだったんだ!ちくしょう、帰ったらあのグズをもう一回痛めつけてから犯し直してやる!!」

感情に任せていたのだろう。思考をそのまま垂れ流しな感じでがなりつけていた。それから先も、良く分からない罵倒を繰り返している。やれ、爺がどうのこうの、魔術回路があれば僕だってどうのこうの。・・・と。

「アンタ、やっぱり桜を・・・!」

「慎二・・・っ!!」

怒り心頭で、遠坂も衛宮も慎二に迫っていく。





「おい」





が、その前に、


―――バキィッ!!


「ぶぐぅぅぅ!?」

うざいわめき声を鳴らすその口を、オレは渾身の力を込めた拳で封じた。

「う・・・お・・・おぉぉ・・・っ!?」

何が起こったのか慎二は分かっていないようだったが、そんなんオレの知ったこっちゃねーよボケ。つか、犯し直すっつーた時点でもうぷちんと切れてますんで念の為。
口元を抑えて蹲っている頭を引っ張って無理矢理こっちを向かせて、胸倉を引っ掴んで無理矢理立たせた。

「調子乗んなやこのダボが。何が全て桜のせい?また痛めつけて犯り直す?大概にせぇよ、お前」

「うぐ・・・っ!う、うるさいうるさい!お前なんかに何が分かる!パンピーのくせに魔術を手に入れて、さぞ嬉しかっただろうね!魔術の家系なのに魔術が使えない僕の気持ちなんて分からないくせに!!」

・・・いい加減にしろよ。

「オレはな!!」

ぐいっと、更に胸倉を捻って引き絞る。慎二が更に息苦しそうにするがそれが目的なので無視。







「・・・ホントはこんな力、欲しくなんて無かったんだ」







慎二はその言葉に目を見開く。衛宮や遠坂も同じく。・・・魔術を使う者なら、今の発現は神秘の否定とも捉えられる。人によっては、かなり遠回しに侮辱しているのと同義なのかもしれない。

「最初はオレも思ったさ。力があれば、聖杯戦争に巻き込まれても生き残れる力があればって。・・・確かに手に入ったよ、幸運にもね。力の中身を理解した時、狂喜したさ。この具現の魔術があれば誰にも負けるものかと。最高、ってやつじゃないか?ってな」

すぅぅぅ・・・はぁ。深呼吸して、一息置いた。

「だけど、今は恐怖し始めている。力を持てば、更に大きな力を引き寄せる。そして一歩間違えれば、酷い目に遭わされる。・・・いつか、そう遠くないうちに自分より大きな力に蹂躙されるんじゃないかって。オレはそう思っている。あの娘が・・・桜ちゃんがまさにそうだ。幼少からお前らの家に預けられて、いきなり虫に犯されて、それが毎日・・・365日ずっと続いて。果ては聖杯の欠片を埋め込まれて実験動物扱いだ。それだけの陵辱を受けて、まだ心を保っている彼女は本当に強い。尊敬に値するよ」

そして、ギロリとオレは慎二を強く睨み直す。

「だけど、お前は何をしていた?単に回路が閉じられたってだけで、衛宮見たく鍛錬もせず自分の境遇を恨むだけ。そしてその鬱憤を桜ちゃんにぶつけていただけだろうが。壊れそうな心を保とうとして、更にはお前の負担にならないように一生懸命だった彼女に追い打ちをかけるように!養子とはいえお前は兄貴だろう!何で自分の妹を救ってやろうとしない!救う事が出来なくても、励ましたり労ったりも出来る筈!だけど実際は何もせず、逆に追い詰めるだけしかしなかったじゃないか!お前は!!」

「ぐ・・・うぅ・・・」

図星なのか、慎二は呻くだけで何も反論しない。

「要は、オレはこの戦争に生き残る為にこの魔術を仕方なく使ってるんだ。今言った蹂躙されるかもしれないって恐怖も覚悟の上でね。・・・単に力を誇示するだけが目的の、何の覚悟も無いちんまいお前と一緒にするなって事だ」

「―――――な」

「あ?」


「僕を・・・僕をバカに・・・・・・するなあぁぁぁ!!!

急にキレた慎二がオレに掴みかかってくる。そして、オレの左手にある偽臣の書を再度奪い返していた。

「「「「「なっ!!?」」」」」

衛宮達もとっさに起きたその光景に驚く。驚きの最たる者は無論ライダーだろう。折角奪った偽臣の書を、あっさりと奪い返させたのだから。

「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ・・・・・・!」

慎二は大事な物をもう奪われまいと、胸に本を掻き抱いてオレから距離を少し空ける。

「・・・そう。それをもう一度手にしたって事は・・・覚悟はしたって解釈して良いんだよな?慎二」

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・!」

「もう一度だけ見つめ直すべきだな。今までお前の行為がどういった意味を持ったのか。これからどうするべきか。・・・まぁ、今すぐに戦いを再開させるっていうのも有りだろう。その場合、お前は何も成長も反省すらもしていないって事になるわけだが。何も成長してないんなら、その内桜ちゃんを更に傷付けて桜ちゃん自身にお前は殺されるんだ。なら―――――」

デッキの上からカードを7枚引き、回路を起動させて戦闘態勢を作る。

「あの子の心がこれ以上傷付く前に、オレが―――」



"―――――お前を、殺す"



オレの持つ、可能な限りの殺気を慎二にぶつけた。

「七枷・・・」

「七枷君・・・」

張りつめた緊張感が場を支配する。どれだけの時間が過ぎたのか。

「く・・・っ。ライダー!」

場の空気に耐えかねたのか、先に行動を起こしたのは慎二だった。セイバーとアーチャー、衛宮と遠坂は直ぐに対応出来るように、ライダーに対して身構える。そして、オレは直ぐに慎二を倒せるよう既に幾つかの攻撃呪文を詠唱して待機させていた。後は名を告げるだけ(シングルアクション)で即発動可能だ。







「―――――帰るぞ」







苦虫を噛み潰したような表情で告げた慎二の言葉は、意外な物だった。

「「「―――は?」」」

遠坂も衛宮もオレも、一瞬呆然とする。今までの慎二なら、偽臣の書を取り戻せばどんな状況だろうと直ぐにライダーを戦わせる。それはまず間違いない結果・・・の筈だった。

「ふん!勘違いするなよお前ら。今のままじゃ状況が不利だからわざわざこの僕が退いてやるってだけだ。今度会ったら絶対に全員倒してやるんだからな!」

口惜しや、とでも言いそうなその表情は・・・勿論悔しそうではあるんだけど、何となく、さっきまであった歪みがほんの少し消えたように、俺は感じた。

「さっさとしろライダー!僕を担いで戻るんだよ!」

マスター権は移った。今のマスターは慎二に帰属している。当然、ライダーはそれに従った。

「ま、待ちなさい!これだけの事しでかして、そのままはい、さようならって帰れるなんて思わないで欲しいわね!そんなのこの私が許す筈無いで「遠坂さん!!」・・・じ、陣・・・」

「お願い・・・・・・行かせてやって」

突進するのを制するように片手を遠坂の前に広げて止める。

「〜〜〜っ!あぁ〜もう!!分かったわよ、勝手にすれば!?これも貸し1よ!」

「・・・ゴメン、あんがと」

一歩間違えれば、大惨事になる事をしでかした慎二をそのまま行かせるなど、冬木の管理者でもある遠坂には容認出来るものではない筈だ。それを曲げてまで無理を通させた事は、オレもすまないと思う。
身勝手な理屈だが、さっきの慎二にほんの少しだけ・・・小さな亀裂くらいのヒビからうっすらとではあるけど、光明が見えた気がしたから。だから、オレはこいつに最初で最後のチャンスというのを与えたかった。偉そうな事を言うようでアレだけど。・・・あ、そうだ忘れるところだった。

「ライダー」

「・・・なんでしょうか?」

「その・・・すまんかった。コロコロとマスターが取っ替え引っ替えみたいになっちゃって。・・・振り回してゴメン」

きょとん、とライダーがその言葉を受け止めて一瞬呆然となる。

「・・・・・・どうか気になさらずに。人が良いのですね、貴方は」

どことなく、笑顔(のように見えた)で騎乗兵は言葉を返した。

「・・・はは、流石に、人の良さじゃそこの衛宮に負けるけどね」

「お、オレ!?」

衛宮はいきなり振られてビックリしたようだった。

「おまい以上に人の良い人間なんて、この世におらんて」

「そ、そんな事は無いと・・・思うぞ?」

「まぁ、兎に角ライダー、そこのバカを極力お願いする。せめて、少しでもマシな方へ引っ張ってってくれたら、有り難い」

「・・・可能な限り、善処しましょう」

「おい、誰がバカだ誰が!ライダー、やっぱり七枷は先にやっつけてし「では戻りますよシンジ。しっかり捕まっていて下さい」ぐえっ!?」

皆まで言わせずに、ライダーは慎二を脇に抱えて学校から離脱した。





「これで一旦は収束した・・・か」

「七枷君・・・。さっきのアレ、どういう事か説明して貰いましょうか?何で慎二を逃がしたわけ?」

遠坂はいたくご立腹のようだ。じろり、と睨んでいる。

「・・・何となくさ、慎二が変わったんじゃないかな・・・って思ったんだ。いつものあいつなら、今頃は無理矢理にライダーを戦闘続行させているだろうし」

「・・・確かに、いつもの慎二ならそうでしょうね」

「でも、あいつは踏み留まった。それが、あいつの心情の変化なのかは分からない。何も変化していないかもしれないけど、光明は見えた気がしたから。だから、あいつに機会を与えたかった。少しでもマシになれる機会を」

「・・・そう、じゃあ次に会った時、それでも変わらなかったらどうするつもり?」

「その時は・・・・・・逃がしたオレが始末を付けるさ」

「お、おい七枷・・・!」

「あぁ、始末を付けるって言っても、さっき言ったような殺すとかは多分しないよ衛宮。・・・まぁ数ヶ月間、精神病院で再起不能にはなって貰うつもりだけど」

「せ・・・精神病院って。・・・何をするつもりなんだよお前」

「精神的に苦しめるカードとか色々あるからな。それをエンチャントさせて暫く反省させるって事」

ざわ・・・ざわ・・・ざわ・・・。

「ん?下が騒がしくなってきたな・・・」

どうやら、学校の生徒や教師が悪夢から目覚め始めたようだ。

「私達もそろそろ戻りましょう。居なくなってるってバレたら色々面倒だし。アーチャー、霊体化して念のため暫くは監視を続けて頂戴」

「了解」

すぅ・・・っと、アーチャーはかき消えた。

「では、私も一旦裏の林に戻って待機しま―――あぁっ!!」

「ど、どうしたセイバー?」

何かを思い出したように、セイバーが口惜しそうに地面を睨む。





「・・・・・・シンジに、竜田揚げを台無しにした件のお仕置きを行うのを忘れていました」





「「「「そのネタはもう良いから」」」」


オレ、遠坂、衛宮、そして霊体化したアーチャーまでもが同時に同じ言葉で突っ込んだ。








Interlude

「ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう・・・・・・」

さっきから脇に抱えたマスターはそればっかりだった。録音の再生のように、その言葉ばかりを繰り返す。いや、言葉自体は聞き慣れたものだ。何か自分に無いものを見つけては狂気じみた声で繰り返すそれ。その後は大抵ろくな事を思い付かない。今の仮初めのマスター、間桐慎二はそういう人間・・・・・・だった(・・・)

しかし、今繰り返している言葉。言葉自体は同じもの。だが、その心情は・・・きっと、違うものだと、仮初めの従者・・・サーヴァント・ライダーは思う。今の『ちくしょう』は、きっと、純粋な怒りと・・・純粋な悔しさで、捻り出しているのだろうから。

「僕だって・・・僕だって、あんなやつに言われ無くったって、桜を何とかしたいって思ったさ、最初は。だけど、小さい頃でしかもあんな虫爺相手に対抗出来るわけないじゃないか・・・・・・」

虫爺・・・・・・間桐臓硯。最初に桜に呼び出されたときに傍にいた、醜悪な虫。あの虫のせいで、間桐桜は縛られたまま、身を任せるしかないのだ。ライダーは心の中で歯噛みする。

「あの狂気に身を任せて、爺に言われるまま桜を犯すしかないじゃないか・・・・・・」

それについては、仕方ないと思わないでもないが、それでもライダーには許せるわけがない。本来のマスターを酷い目に遭わせたのは事実であり、可能ならばあの少年ではなく自分がこの男を殺してしまいたい、とも思っているのだ。

あの少年でライダーは思い出す。そういえば彼は・・・ナナカセジンは、自身の真のマスターがサクラだと知っているようだった。偽臣の書に関しての言い回しと良い、シンジがこの先サクラに殺されるんだ、と断言する所と良い。彼には予知能力でもあるのだろうか。興味は尽きない・・・と。

「力が欲しい・・・・・・力が、力が、力が・・・!間桐の力が・・・・・・僕が僕でいられる力が・・・・・・」

「・・・・・・・・・」









「―――――――桜を、助けられる力が・・・・・・・・・欲しい」









やはり、ライダーは許せない。許したくない。許せはしない。許せる訳が無い。・・・・・・過去は。

だが、未来は―――――

「(これから先は、貴方の行動次第ですよ、シンジ)」

―――未来は、少しだけ譲歩しても良いかもしれない。と、騎乗兵は思う。

「―――――ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう・・・・・・」

また繰り返し始めるその言葉。気付けばいつの間にか、慎二はボロボロと涙を流していた。悔し涙だろうか?・・・・・・取りあえず。

「シンジ」

「ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちく・・・がべっ!?」




「喋っていると、舌を噛みますよ?」




過去の罪における最初の仕置きは、こんなもので済ませておいてやろうと思った。




Interlude out


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