さて、時間は激しく過ぎ去って現在お昼時も終わった辺り。オレは昼飯を食った後、自分の荷物・・・って言っても主に着替えだけど・・・を取りに一旦家に戻る道筋を辿っていた。今、衛宮の家にある着替えは制服とパジャマと普段着1着、下着数点の本気で必要最低限のみ。いや、まぁそれで回らない事もないんだけど、もう2〜3着くらいは持って行っておきたいしね?少しバタバタしてたから、一度ちゃんと揃えておきたいしね?
え?朝の打ち合わせはどうしたんだって?確かに打ち合わせはしたんだけど、開けてみれば衛宮がやっぱりすぐにでも行こうと提案してきたけど、昼間だと坊さんや参拝客も居る可能性があるから、巻き込ませないために夜中に出て向かおうって事にしようと決めた。山門のアサシンは多分通してくれないだろうから、3人がかりで物干し竿を折るなりして無力化させた後、死なない程度に倒して強行突破の方向で落ち着いた。3人がかりでやり込める事にランサーが少し不服そうだったけど、急を要するのでそこは勘弁して貰いたい。
まぁ、決めたのはそれくらい。後はキャスターと会ってから説得と交渉次第って所かな。
情報交換については、まぁ・・・その、アレですよ。ちょっとここに回想置いておきますね。






取り決めを終え、今度はバゼットにこちらの持つサーヴァントの情報、マスター、真名等を教えた。

「キャスターはメディア、アサシンは佐々木小次郎、ライダーはメドゥーサ、そしてバーサーカーはヘラクレスですか。・・・アサシン以外は英霊としては名高い人物ですが、やはりその中でもダントツなのがヘラクレスですね。それにしても、何とも無茶苦茶な選択をしてくれますねアインツベルンは」

「確かにそうですね、バーサーカーに至っては多種多様な高いランクの攻撃とかじゃないとほぼ勝てません。でもアサシンも能力は甘く見ない方がいいですよ。ここは日本です。地元の知名度で言えば一番高いと言ってもいいですから」

あぁ、そう言えば確かにと、バゼットも顔を曇らせる。

「知名度によって能力も多少左右されることを失念していましたね。・・・ふむ、これは一筋縄では行かなそうだ。まぁバーサーカーに関しては、こちらに3人のサーヴァントがいますし、多少強引に行けば何とかなるかもしれませんね。仮にキャスターやアサシンも取り込めれば5対1。勝率は上がる・・・か」

多少なりとも、の感が強いですが。と与えられた情報を反芻して、更に表情が曇っていく。

「ふぅ・・・それについてはまた考えるとして。こちらの情報も提供しなければいけませんね。私達はここ数日、キャスターとの前哨戦以外サーヴァントとは戦闘せず・・・というか遭遇しなかったもので、街の回りの状況等を巡回して情報収集に専念していました。収穫したものは少なかったのですが、その中で一番大きな情報は1つ」

ごくり、と誰かの喉を鳴らす音が妙にこだまする。こちらの知っている情報以上の事がある可能性は充分ある。一体どんなネタを掴んでいるんだろう。

「今回の―――――」

『―――――今回、の?』

各々の声がハモり、緊張感は更に増す。



「今回の聖杯の降霊地。そこは間違いなく柳洞寺になると思われます。数日前に柳洞寺近辺を調査した時、キャスターの神殿に備蓄されていたのとは別の異様な魔力を感知しました。魔術協会の古い資料にありましたが、柳洞寺は大規模な空洞があるらしいので、恐らくそこから漏れ出ていたのでしょう」



と、真面目な顔でそう告白した。自信を持って答えているその様は、「えっへん」と胸を張っているような気さえする。

「―――――。えっと・・・」

暫しの沈黙後、最初に言葉を発したのはオレだった。

「何でしょうか、陣君」

「一番大きい情報っていうのは、それですか?」

「・・・?はい、そうですが?」

それが何か?と言いたげな顔でオレを見つめ返すバゼット女史。

あー・・・・・・・・・いや、あの・・・・・・その・・・ね?









ごめ、それめっさ既出なんですが。






『Fate/The impossible world』






以上、大雑把な回想終わり。そしてその事をバゼット告げると、彼女はかなりヘコんでしまった。全員でフォローは一応したけど、効果があるかどうかは未知数っぽい。と言うわけで、情報交換に関してはほぼ収穫ゼロって事だ。
かいつまんでだが、朝の出来事はここでおしまい。んで今現在に至ると言うわけ。
そうこうしている内に、懐かしの我が家に辿り着いた。と言っても数日しか経ってない事に突っ込まないのが吉だ。
ガチャガチャ。

「・・・ん?」

と、玄関のドアを開けようとしたら鍵が掛かっていた。母さん留守なのか?持っている家のスペアキーで鍵を開けて、中に入る。

「ただーいまー。母さん?」

この時間帯ならいつも居間で昼ドラ見ている。年齢不相応な外見だが、そこら辺は普通の主婦と変わらなかったりする。・・・が、居間には居ない。

「買い物か・・・」

と思っていると、ダイニングキッチンのテーブルに書き置きがあった。

『陣へ
ちょうお友達の所に遊びに行って来ます。
夜遅くまで帰られへん思うから、もし帰ってたら、ご飯作って冷蔵庫入れてるから温めて食べといてーな。
七海』

連れんとこか。というか、オレがいつ戻ってくるか分からんのに、毎日作っておいてくれてたのかもしかして?・・・ん?まだ続きがある。

『PS.
何やってるのか良く分かれへんけど、たまには顔見せにこっち帰ってきてなー。少しだけ、かーさん心配やねん。

我が侭言うて、ごめんなぁ・・・』

「・・・・・・・・・」

あ、いかん。少し、ほ、ほんの少しだけだぞ!?その・・・泣きそう。こんなに涙腺緩かったかなオレ。

「・・・・・・はぁ、全く」

それを誤魔化すかのように、溜め息をついてやれやれとぼやいておいた。冷蔵庫を開けると、ラップに包まれたおかずが数品ある。コレを食えって事らしい。

「ま、折角だし」

それらをレンジでチンして、ご飯を盛って食うことにした。衛宮の家で昼飯を食ったばかりだったけど、そこはそれ。肉体的には食べ盛りな年頃ですから。いや、まぁ実年齢な身体でも大差無いと思うけど。23でも、別に連続で食うの辛くない・・・よね?
そんなに時間は経って無いのに、母さんのご飯の味は懐かしい気がした。






そして暫く時間は経過し、カタリ。と箸をおいてご馳走様。

「てかすいません、やっぱ辛かったです・・・」

残さなかったけど。腹が、めっさ苦しい・・・。食器を流し台に放り込み、本来の目的である着替えその他諸々を回収。

「・・・・・・」

後は家を出るだけだが、その前にふと思い至る事があったので再度ダイニングに戻る。鉛筆を手に取り、メモ代わりに使っているチラシの裏の一枚を机に置いて、サラサラっと書き記す。



『母さんへ
一旦着替え取りに家に戻ってた。飯置いてあったから遠慮無く食わせて貰ったよ。
後、いつオレが戻るか分からんし、飯は作り置きせんでええよ。金がかかるし。
戻れるときにはちゃんと戻るので心配しないように。じゃ、そう言うことで。

PS.
心配かける親不孝モンでゴメン。オレは、大丈夫だから。

陣』



言いたいことを取りあえず赴くままに書いてみた・・・・・・けど。

「・・・・・・」

いや、いやいやいやいやいや!傍にあった消しゴムを取って最後の所をガシガシと思いっきり削る。完全に抹消。鉛筆で書いてて良かった・・・。そして書き跡を塗りつぶすように太くこう記した。

『PS.
飯のおかずにレバーを入れなかったことは褒めてあげるんだぜイヤァッホゥ!』

これでよし。あんなのオレの柄じゃないし、こんなモンで良い。・・・良いったら良いの!






そして、夜が来た。

「少し前に来たばっかりなのに、前と比べて妙に威圧感があるような・・・」

オレはセイバー、アーチャー、衛宮、そして遠坂達とこの場所――――柳洞寺へと続くあの長い階段のふもとへ来ていた。ちなみに、バゼットとランサーはここには居ない。自分の提供した情報が無意味だった事が余程悔しかったのか、オレが帰って来てさあ後は夜が来るのを待つばかり!と思った矢先、

『今度はちゃんと有益な情報を持ち帰りますので、今回の柳洞寺侵攻に私とランサーは外させて頂きます。良いですね、陣君?』

と、凄まれたので仕方なくOKサインを出しました。その後遠坂には、

「人手が欲しいって時に何押し切られてオッケー出すのよバカ・・・」

とお叱りを受けて散々だった。というか、オレか?オレのせいなのかコレ?

「凄いわね、いつの間にここまで魔力を溜め込んでいたのかしらキャスターの奴。仮に真正面からやり合って、セイバーとアーチャーの2人がかりでも倒せるのかしら・・・」

そう遠坂が呟いた所で我に返る。余計なことを考えるのはここまでにしておこう。

「出来れば、戦うのは勘弁願いたい所だけど・・・さて、じゃあ登りますか」

セイバーを最前列、その後ろに遠坂、衛宮、オレ、最後列にアーチャーといった陣形で長い階段を登り始めた。

カツカツカツ。上る。
カツカツカツ。・・・上る。
カツカツカツ。・・・・・・上る。
カツカツカツ。・・・・・・の、上る。
カツカツカツ。・・・・・・・・・の・・・・・・の、上・・・
カツカt

「すんません、少し休憩させてください・・・orz」

3分の2くらいを一気に登りきった辺りでもうバテますた。ぶっちゃけ、もうしんどいです。つか前に母さんと来たときにも思ったけど、この寺の階段、数大杉。

「何よ陣、これくらいでもうへばっちゃったわけ?それに階段も後ちょっとじゃないの」

「ふ、普段から、そんなに、運動、して、ないから・・・もう足が、キツイよ」

「仕方ないわね・・・セイバー、アーチャー、士郎。少しだけ休みましょう。無理に上りきって、バテてる陣を蜂の巣にされたら堪らないし」

迷惑掛けます、ホント。



少し座り込んで呼吸を整えた。そろそろ大丈夫かなと思った所で、

「ほう、このような夜更けに大所帯で寺に参拝かな?・・・魔術師とその従者達よ」

上から、声が降り注いだ。各々が上を見上げると、さっきまで何もなかった山門に、1人の男が立っていた。古風な着物を纏い、腰まであるであろう長い髪を後ろに束ね、俗に言うポニーテールまがいな感じに仕上がっている。手にはその者の身の丈もあろうかと思うほどの長い刀を、まるで己の一部であるかのように軽く携えている。飄々としたその佇まいでいるその男。

「誰!?」

男は遠坂のその質問に呼応する。

「アサシンのサーヴァント・・・・・・佐々木小次郎」

そう、別段大したことなどないと言うかのように、小次郎は己を晒す。

「・・・アンタが佐々木小次郎」

「ふむ?あまり驚かないようだな。以前ここに来た魔術師の女と槍兵は驚きで唖然としていたものだったが」

「そりゃあね。私達アンタの真名とか特徴とか、マスターがキャスターだとか、事前に知ってたもの」

ほぉ。と小次郎の方が少なからず面食らって驚いていた。

「今の所一度も山門を通らせてはいないのに、我がマスターがあの雌狐という所まで知っていようとは。少々解せんがまあいい。さて、命が惜しければそれ以上階段を上らぬ事だ。我がマスターから『夜は何人たりとも通すな』と命を受けているのでな。それ以上上るというのならば、お主らの首と胴が離れることになる」

「こっちとの彼我兵力差がありすぎるのに、大した自信ねアサシン。その根拠のない自信、どこからくるのかしら」

「ふ・・・根拠の無い自信かどうか試してみるか?」

「・・・・・・上等」

互いに火花を散らせ、小次郎は構えを取って居ないが雰囲気は既に戦闘モード。遠坂は宝石を手に取り、今にもアーチャーに指示を出そうと―――

「って、遠坂さんちょっと待った!」

する前に、何とか遠坂を踏み留まらせた。

「何よ陣、お昼に決めたでしょ。さっさと全員で袋叩きにしちゃえばいいじゃない」

「いや、そうは言ったけど一応説得するだけはしないと・・・。全員で行っても、被害が出ない訳じゃないだろうし」

無駄だと思うけど・・・。と言う遠坂を抑えて、一度小次郎に相対する。

「・・・何かな?」

「いや・・・その・・・今日ここに来たのは、キャスターさんにちょっと話があってきたんだ。戦いに来た訳じゃない」

「ふむ・・・あの女に話し合いなど無駄だと思うが。第一、私にとってそちらが戦いに来たかどうかなどは関係ない。この身は暗殺者として呼ばれ不満ではあるが、私は1人の剣士として戦う為に・・・戦いたいが為に召喚に応じたのだ」

「ちょっと待ってくれよ、こっちには戦いの意志は無いんだ!あの人と少し話の場を設けたいだけで「くどい」・・・・・・っ!」

オレの言葉を遮り、小次郎は刀の切っ先をこちらに向ける。

「言った筈だ、戦いに来たかどうかなどは関係ないと。そちらが取れる選択は3つ。私と戦って斃しこの山門を押し通るか、それが叶わず殺されるか、踵を返して逃げ帰るか。そのいずれかしか無い」

さあ選ぶが良い。と言うと、小次郎は再度切っ先をこちらに振りそのまま沈黙する。もはや語る言葉は無し、とでも言いたいのか。・・・くそ、やっぱりここで戦うしかないってのか。

「ジン、下がっていてください」

と、今まで沈黙を守っていたセイバーがオレを押しのけて前に出る。

「アサシン、1つ提案があります。いえ、取引とでもいえば良いでしょうか」

そしてセイバーは、

「私は剣の英霊、サーヴァント・セイバー。我が真名はアーサー。嘗てブリテンを統べ、騎士王と称された者だ。佐々木小次郎よ、私は貴方に一騎打ちを申し込む!」

止める間もなく、とんでもないことを宣っていた。

「なっ!?」

「ちょ・・・セイバー!?」

遠坂も衛宮も愕然。アーチャーは言葉こそ吐かなかったが、表情は少なからず驚きで色付いている。勿論、オレ自身も呆然としていた。

「1対多数の戦いは貴方の望むところでは無いでしょう。私と1対1で存分に戦う代わりに、シロウ達を通して貰いたい」

ぽかーんとしているオレ達を尻目に、セイバーはそう提言する。

「―――――」

「・・・アーサー王が相手では不満か、アサシン?」

目を見開きセイバーを見つめ続ける小次郎に、セイバーは不服と感じ取ったのか、睨み付けそう問う。

「―――――は」

少しの間を置いて漏れ出たのは、笑いの吐息。嘲りは無く、感嘆と己の間抜けさを苦笑いしたものが混じったものだった。

「いやはや・・・私が最も戦い合いたい相手が今此処に居て、しかも己が弱点を突かれかねない真名を惜しげもなく名乗り上げるとは。そしてその名はかの有名な西欧の騎士王ときた。この見目麗しい少女がそれと知れば驚きで感嘆も漏れるというものだ」

「・・・それは私を侮辱していると捉えて良いのだな、アサシン」

「ああいや、貴殿が女だからどうとかいうのは別に嘲った意味で言ったつもりはない。そう受け取ってしまったのならばすまなかった」

「御託は良い、この取引受けるか否か。返答を」

「ふ―――――是非も無いだろう」

にぃ・・・っと小次郎は笑うと、セイバーに切っ先を向け、

「今日ほど幸運な日は無い。この喜びに乗じて門を素通りしようとする不届き者の2人や3人、居たとしてもこの目には留まらんよ。ここを通した事による令呪の重圧も瑣末な事だ」

了承。と答えた。

「感謝します、アサシン。ではシロウ、ジン達と先に行って下さい。私も直ぐに後を追いますので」

「ま、待てよセイバー!」

話を自分に振られて、ようやく衛宮が再起動して待ったをかける。

「自分の真名を名乗り上げたり、1対1で一騎打ちをしようとしたり無茶苦茶じゃないか。アーチャーと2対1で戦った方がまだマシだろう!」

「シロウ、今回は相手を斃すのではなく、話し合いに来たのでしょう。私がここを引き受ければ、皆が無傷なままでキャスターの所まで行けます」

「だけど、セイバー1人で戦わせるなんて・・・!」

「お忘れですか?今の私は・・・・・・」

セイバーから・・・厳密にはセイバーの手元から・・・風がうっすらと噴き出てきた。猛々しいその威圧感は、戦闘状態に移行しつつあることの現れ。

「ほぼ全力で戦えます。アサシンに負ける道理などありません。・・・未だに遺憾が残っていますが、結果的にジンがシロウとのラインを再接続してくれたおかげです」

その自信に溢れる顔は、己の敗北などあり得ないと断言している。・・・てか、まだ根に持ってたんすか。

「本当に大丈夫なんだな?」

こくり。問う主の言葉に、剣の英霊はハッキリとそして確かな自信を持って頷いた。

「・・・分かった。絶対死ぬなよ、セイバー」

「話はまとまったようだな。ではセイバー以外の者は山門をくぐるが良い」

衛宮もようやく納得したところで、小次郎が急かすようにさっさと行けと言う。・・・やる気満々ッスねあんた。

「言われなくても通らせて貰うわ。・・・アーチャー」

遠坂が己の従者に目配せをすると、承知したと言うかのように彼の者は頷き、先頭に立って石段を登る。念の為に双剣を手に、後を追うオレ達と山門にいる小次郎との間に割り込むように立ち塞がった。小次郎が闇討ち等の不審な動きをしないかどうかを監視するつもりなのだろう。当然の行動ではある。

「・・・さて、ここまで近付けばこのまま貴様を容易く切り伏せる事も可能ではあるな」

弓兵は、幾分かの殺気を纏い暗殺者に向けてぽつりと漏らす。一足一刀より少し近い間合い。奇襲を仕掛ければ、少なくとも先手は取れるだろう。というか、折角話がまとまったのにコイツときたらホンマにもう・・・っ!

「はは、脅しにもならんぞアーチャー。如何に近いと言えども、私に先んじて殺れるとは思っていまい。それに、お主のマスターはそういった手段は好まぬ性質のように見えるが」

ちっ。と、アーチャーは苦々しく舌打ちをする。どうやら、単に挑発しただけだったらしい。小次郎は一発で看破して柳のようにその挑発を受け流していた。

「・・・・・・」

アーチャーが壁になってはいるが、あくまで注意深く、遠坂も衛宮も小次郎の挙動を意識して横を通り過ぎていく。

そして、オレも小次郎の横を通り過ぎようとして、ちらりと目を向けると、

「・・・・・・。む?」

こっちを一瞥していた小次郎とバッチシ目が合ってしまった。そして何故に「む?」なんでしょうか。ガ、ガンつけたわけじゃ無いッスよ?

「あの・・・な、何か?」

「・・・いや、其方は確か以前にもここに来訪していなかったか?」

「はぁ・・・数日前ですけど、その・・・一応母と」

と言うことは、前に来たときからもうこのアサ次郎は召喚されて山門に居たっぽいな。霊体化してこっちを見てたんだろう。・・・で、あの、それが一体何だというでせうか。

「・・・ふむ、やはりか」

得心し、こくりと頷く。そしてくくく・・・と、どっかのあくまの劣化版みたいな笑みを浮かべ、

「成る程、面白い状況に出会せたやもしれぬが致し方ない。・・・後ろ髪引かれるが、セイバーと戦える事との代償と思えばまだ諦めもつくか」

いや全く、残念残念・・・。と、こちらには何がなにやらな事を呟いて笑う小次郎さん。あのーっ、こっちにも分かるように説明して欲しいんですけどーっ?

「いや済まぬ、単なる戯れ言だ。気にしないで貰いたい」

・・・・・・嘘だ。このニヤニヤした目で何でもないとか言われても、1ミクロンも信用できねぇ。

「何をしている七枷陣。呆けていないでさっさと先に行け」

怒られてしまった。・・・気にはなるけど仕方ない。訝しげに小次郎を見た後、オレはそのまま横を駆け抜けていく。オレ達が完全に小次郎の間合いの外になったのを確認したアーチャーも、オレ達に続いて追いかけてくる。



さて、第一関門は突破。今度はキャスターの居る部屋を探さないとな。アーチャーがいるから比較的簡単に行くだろうけど、途中でまず妨害されるだろう。・・・竜牙兵とかうじゃうじゃ来たり、何か結界のトラップが来たりするのは面倒だよなぁ。






Interlude



陣達の足音が遠のく。殆ど聞こえなくなると、小次郎は満足げに笑みをセイバーに向けた。

「ようやく静かになったなセイバー。では、早速死合おうか」

じわりと、だが確かな殺気を小次郎は纏い出す。が、セイバーはそれに待ったをかけた。

「いえ、アサシン。もう少し待ちましょう」

「何故だ。よもや今更怖じ気づいたとは言わせんぞ」

「まさか。待つ理由は貴方が一番良く分かっている筈です。何者も通らせるなという令呪の命令を無視してシロウ達を通らせたのです。規模は分かりませんが、そのペナルティとして重圧を受けているでしょう」

「・・・気付いていたか」

事実、小次郎の身体には目に見えない縛りが付けられ、締め付け、電流を流し込まれたような痺れに襲われていた。戦う分には一応支障がないとはいえ、現状でいくつかのステータスはランクダウンしてしまっている。

「えぇ。ですから、その重圧が和らぐまで戦うのは待つべきです。双方が万全な状態での戦いが、貴方の最も望むところなのでは?」

「確かにそうだが、そうする事による利益などそちらには皆無ではないのか。寧ろ不利益になる。その前に仕掛けるのが妥当だと思うが」

「侮るなアサシン。そちらが万全の状態でも、私が負ける事などあり得無い」

「・・・大した自信だなセイバー。その慢心、己の命を取りこぼす要因にならねば良いがな」

くつくつと、青い和服を揺らめかせながら暗殺者は嗤う。

「それに・・・」

「?」

「それに私は一度、本来の全力で貴方と戦ってみたかった。剣士としての技量は、悔しいが貴方が一番上です。今までの対峙は、いくつかの幸運が重なっての辛勝ばかりでしたから。貴方が回復するのを待つ理由として、そういう個人的なものも含まれています」

そう言えば、戦うことすら無かった事もありましたね。・・・付け加えてそう告白する騎士を、暗殺者は訝しげに見やる。それも当然。対峙するのも死合うのも初めての筈。なのに、この騎士はまるで己と何度も果たし合ったような口ぶりだった。・・・それこそ、何度も何度も繰り返して。

「ふむ・・・おかしな事を言うなセイバー。私がお主と果たし合うのはコレが初めての筈。なのに、何度も戦ったかのような口ぶりだな」

その疑問にセイバーはつい口を少し滑らせたことに気付く。が、苦笑いを浮かべ、

「いえ、単なる戯れ言・・・のようなものです。気にしないで貰いたい」

まるでさっき七枷陣に語ったのと同じように、意地の悪い言葉で騎士が暗殺者にそう返した。

「・・・・・・ははっ」

成る程、確かにこの顔で返されれば些かも信用ならない。彼の少年が見せたようなジト目にもなるというものだ。

「・・・・・・ふむ、そろそろか」

いつの間にか、懲罰はもう終わりを迎えていたらしい。身体の痺れも縛りも、もう殆ど感じない。あと数瞬もすれば、完全に消え去るだろう。・・・機は熟した。

「長らく待たせたなセイバー、我が縛りはようやく消えた」

「そのようですね、では・・・・・・」

セイバーから、厳密にはその手にある不可視の何かから、緩やかに・・・だが僅かな間も立たずに激しく風が舞い上がる。・・・いや、そんな生易しいものではない。ずっと続く間欠泉のように噴き上がっていた。

「私も封を解くとしましょう・・・っ!」

それは紐解く為の工程、手順、儀式である。肉眼でも魔術的な透視でもそのモノを視野に捉える事を許さない、認めさせない為の不可視の風。その神秘の塊であり、宝具にまで昇華されていた風の封印、風王結界(インビジブル・エア)をセイバーは解除する。

「はぁぁぁぁ・・・・・・っ!」

震え上がる大気。セイバーの手元から、徐々に形が浮かび見え出す何か。華奢なその騎士には少々不釣り合いな、だがそれを手にしているのが当然でもある。そんな矛盾。それを佐々木小次郎は感じていた。そして遂に、その封が完全に解き放たれる・・・っ!

「・・・それが、彼の騎士王が持つ」

黄金と言うには黄色過ぎ、純白と言うには白さが足りない。白金と言えば一番近いのだろうが、僅かながらしっくり来ない。だがそれは確かに、明るく光輝いていた。

「そう、これが私の剣―――」

エクスカリバー。約束された勝利を運ぶ剣。数々の敵を薙ぎ払う、星に鍛えられた神造兵器。数多の人の想いが積み重ねられた結晶―――。

「―――――っ」

ごくり。思わず息を呑む。その威圧感、流麗さに感じ入るものがあった事も原因の1つ。だが、この暗殺者の役割を与えられた剣士に生まれていたものは只の1つ。



「――――――――――は」



歓喜。

「は、ははは・・・はははははははっ!」

歓喜、歓喜、歓喜、歓喜歓喜歓喜歓喜歓喜―――っ!
普通ならば死が容易く見えるであろうこの圧倒的な剣を持つ騎士を相手に、小次郎は微塵も恐怖を感じてはいなかった。あるのは只、狂喜(よろこ)びの感情のみ。当然だ。この世に喚ばれて以来、門番などというツマラナイ役割を当てられていたのだ。戦う者にとってふて腐れてしまうのは当たり前。
己の望んだ強者との戦いこそ彼が欲していたモノ。それが今、此処にご馳走となって目の前に差し出されているのだ。今、飢えて飢えて飢えて飢えて溜まらない自分の目の前に、だ。それを目の当たりにして、狂喜しない者などいようか?いや、いはしないっ!

「やはり戦争はこうでなくてはな。この身には過ぎた相手ではあるだろうが、この機に感謝する。さぁ、さぁさぁさぁ!存分に死合おうぞ・・・・・・セイバー!!」

らしくなく、滾る興奮に身を任せつつあるアサシン。

「言われずとも、そのつもりですアサシン」

対して、セイバーは落ち着きを払っている。エクスカリバーを正眼に構え、すぅぅ・・・っと、息を整える。と、


「いざっ!」


気を込め、甲高く、張りのある叫び声を上げた。

「―――――」

その、聞き覚えのある・・・いや、それは違う。その、いつか聞きたかった(・・・・・・・・・)かけ声に、小次郎は冷や水を浴びせられたように沈黙した。

そして、僅かだけ己の生前を幻視する・・・。






名を残したかった。別に後生に轟くような、人々に崇められるような存在というわけじゃなく、只、「結構前に、『    』っていう、こんなに強い人がいたんだぜ」という程度のモノで良かった。幼心に思ったのは、そんな誰でも望んでいるような事だけ。
だから鍛えた。幸い、貧乏暇無しな百姓の末弟だった事もあり、体力は農耕で人並み以上に育った。後は、何で強くなるかを考えるだけ。短絡的に、刀で・・・つまり、侍として強くなろう。そう思った。
最初は家業の片手間、折れた木を使ってひたすら素振り。慣れれば段々と大きくしていった。独学で師も居ないので、どれほど強くなったかは分からない。でも、黙々と続けた。

時が過ぎ、背が伸び、少年は徐々に大人になって行く。それに呼応するかのように、得物も只の棒切れから、自分で削って作った歪な木刀に変わっていく。その時分のある時、

「空を駆けるあの素早い燕を斬ることが出来れば、自分は充分に強くなったのではないだろうか」

ふと、そう思い浮かぶ。青年になる数歩手前。少年の目標が決まる瞬間だった。
それからは、一心不乱に燕を狙って木刀を振るう。低空で地に伏せてくるタイミングを狙って、打ち下ろす。が、当然燕はその軌道を避ける。当たるはずもない。

「・・・・・・」

もっとだ。きっと自分の鍛錬が足りなかったからと、少年は己を鍛える。家業がさぼりがちになり、兄姉、父母にまで叱られたが、それでも懲りずに己を鍛えていった。
その出来事とほぼ同じくして、少年は見つける。己の、生涯の相方と。百姓の蔵に、あからさまに似つかわしくないモノを発見する。
日本刀。それも異様に長い。柄に銘が打ってあった。名は、「青江」。寺子屋で一通りの読み書きは習ったから、その字を読むことは出来た。少年は思う。この長さがあれば、もっと燕に届くのでは、と。
父に譲って欲しいと願うと、紆余曲折はあったものの、渋々ながらも許してくれた。・・・家業をもっとちゃんと手伝うと約束させて。

それから、得物を木から鉄に変えた少年は己を鍛える為ひたすらに突き進む。長すぎる得物のソレは、弧を描く為、更なる速さを以て斬撃を繰らなければ、燕には届かないのだから。本来なら、そんな長すぎる刀を使うよりもっと効率の良い武器を探せばいいのだろうが少年はそれを選ばなかった。いつか、きっと。この青江ならいつの日にか燕を斬り伏せるという、不確かな・・・でも、何故か確信めいた想いがあったから。

時は更に経ち、少年から青年になり、更なる鍛錬に鍛錬を重ね、いつの日だったか青年は不思議な光景を目にした。いつものように、燕を斬ろうと青江を振るうと、



―――ヒュン。

当然、またも避けられる斬撃・・・なのだが、ここからがいつもと違っていた。

―――ヒュン。

己が振るったのは一度きり。・・・なのに、別方向から己の振るった2度目の斬撃が燕を襲う。辛うじて、燕はその一太刀を躱すことに成功し、上空へと逃げていった。

「・・・・・・」

恐る恐る、燕はいないがもう一度同じように気合いを入れて振るってみる。・・・またも、己の放ったものとは別の斬撃が現れた。



気付く。遂に、極みに至れたのだと。それを確かめるかのように、タイミングを合わせて燕に2連撃を放つ。

―――ヒュヒュン!
ザシュッ。

・・・・・・・・・・・・。斬れた。遂に、燕を墜とせた。

「・・・やった・・・・・・やったっ!」

喜びに身を任せ、噛みしめるようにもう一度燕を斬ってみる。・・・が、

「・・・・・・え?」

2連撃。同じ軌道だが、今度は燕に避けられてしまった。そして悟る。自分はまだ至れていないのだと。この2連撃では、不完全なのだと。

「ならば、3連撃ならどうだろうか・・・」

そう思い至るのに時間は掛からなかった。2回でダメなら3回。それでダメなら4回。それに至るまで続けるのみ。

月日は流れ、青年は立派に成人し、1人の男になる。が、燕を墜とす為の3つ目の太刀がまだ生み出せなかった。1の太刀は、頭上から股下までを断つ縦軸、生み出す2の太刀は、それを回避しようとする対象の逃げ道を防ぐために、円の軌跡を紡がせる。そうすれば、比較的高確率で燕を墜とせる事にまでは至った。
だが、やはり後1つは必要だった。そのどちらも回避する為に、左右の何れかに離脱されると避けられやすくなってしまうからだ。その左右に離脱させる事を防ぐ薙ぎ払いが出せれば、この技は完成するだろう。
だから3つ目を生み出す為に、青江でひたすら繰り出すことに明け暮れた。いつ終わるのかも分からない時間を掛けて、ずっと・・・ずっと・・・・・・ずっと。



そして、都合何度目の繰り出しかももう思い出せない辺りに、



―――ヒュヒュヒュン!



奇跡は、起きた。



壱の太刀、頭上から股下までを断つ縦軸。

弐の太刀、それを回避しようとする対象の逃げ道を防ぐ円の軌跡。

参の太刀、二つの太刀の隙をかいくぐって避ける左右への離脱を阻む薙ぎ払い。




その奇跡の産物は、今この瞬間、魔剣へと昇華し、この男のモノとなり、極みとなった。

「・・・・・・・・・」

至った。最初に至ったと思い込んだあの時と比べれば、幾分今の己は静かになっている。情熱的に飛び上がっても良いのに、何故だろうか。

決まっている。技が極まれば、後はそれを試す為の相手。好敵手が必要なのだ。次の目標が決まっているのだから、うかうか喜んでなどいられないのだ。男の行く道に終わりは無い・・・・・・かのように見えた。

しかし男の生涯は、ここで劇的に変化する。まず、そもそもこの時代は既にある程度の平定が成されていたため、戦う為の相手は周りに存在しなかった。辻斬り紛いの事でもすれば良いのかも知れないが、男はそういう凶行をしてまで己の力を世に知らしめようとは思わなかった。せめて、戦乱の世であれば男の名は歴史に残ったのかも知れない。
更に不幸なのは、この剣技、男は「燕返し」と名付けたこの技を極めたその少し後に、この、魔の法にも至る剣技の代償とでも言わんばかりに男は病に伏せる。僅かな時が過ぎる度、疲弊し、衰弱し、頻繁に吐血する。村の中でも、そんな奇病にかかったのはその男だけだった。

もう、起き上がることも出来ずに、男は悔やむ。己の人生にではない。比較的穏やかに過ごせたこの生自体には特に不満はない。只、身についたこの技を、知らない誰かに・・・贅沢をいうならば、強い侍達に見せたかった。これだけの技を、私は持っているのだぞと、知らしめたかった。絶対に避けられない3つの斬撃を同時に繰り出す剣士、『    』の名を、誰かの心に刻みたかった・・・。



『いざ!』



『尋常に!』



そう、決闘のかけ声を言い合い、死合って、己の全てを相手にぶつけたかった。

「(・・・・・・願わくば)」

もう、言の葉を紡ぐことすら叶わず、男は心で独白する。・・・己の、願いを。

「(願わくば、一度で良い。・・・私以上の、強者と・・・満足行、くまで、戦い・・・た、か―――――)」






世界に囚われ、いつの日にかきっと。と、期待の薄い望みを持っていたが、よもや西洋の騎士に日本流の挨拶をされるとは思わなかった。
感謝しよう、剣の英霊よ。泡沫の取るに足らぬこの身なれど、我が望みを叶えてくれたことに感謝しよう。
す・・・っと、瞼を閉じると、小次郎はセイバーに向けて会釈をする。顔を上げると、霧散していた気配が変わる。先程まで熱く激情に任せていたものではなく、佐々木小次郎本来の持つ静寂で、しかしいつも以上に張り詰めた一部の隙も無い空気に変わっていた。
と、


「・・・・・・尋常に!!」


眼を目一杯広げ、不敵な笑みを浮かべ目の前の敵を見据えた。幕は上がった。一呼吸も置かずに、両者は激突する・・・。



「「―――勝負!!!」」




Interlude out






おかしい。別の意味で気味が悪かった。今は本堂の中を闊歩しているのだが、何もない。人気も何も一切。・・・いや、人気はキャスターが寺の人達を操って下山させたんだろうから、別に不思議でも何でもない。おかしいのは、何もない事なんだ。

トラップや竜牙兵、その他の妨害が、何もない。何もない事が逆に不気味だった。

が、進まなければならない事は変わらないわけで、アーチャーを先頭にキャスターの気配を探りつつ進行する。本堂から離れに移り、その中の一室に足を止める。・・・人の気配がした。流石にオレでも気づける。他に人の気配が無いからここだけいやに浮いて目立つし、何より襖ごしだからくぐもってるが、人の声がするからだ。

「・・・ここだな。キャスターの気配を感じ取れる」

開けるか?と、アーチャーは目で己のマスターに問う。

「・・・えぇ、開けて頂戴。開けた瞬間、どかーんなんて事になるかもしれないから油断しないで慎重にね」

「無論だ、凛。・・・では、開けるぞ」

不意打ちに対処出来るよう双剣を構え、襖に手をかける。すー・・・っと一気に引いて開けた。と、

パシャッ!

と、妙な音と共に閃光が走る。

「くっ!?」

「うわっ!?」

「眩し・・・っ!やっぱりトラップってわけ!?」

「くそっ!・・・具現魔術(スタンディン)―――!」

パシャパシャパシャッ!閃光が連続で降り注ぎ、それに続いて件の怪音が響く。何だコレ、まるでカメラのフラッシュみたいじゃ・・・・・・ない・・・か。・・・・・・?

「フラッシュ?」

光を遮る腕をそーっと下げて、恐る恐る周りを見渡す。・・・別に魔力の塊のビームが出てるわけでもなく、悪鬼羅刹なグロい使い魔が居るわけでもなく、その部屋の中は至って普通の和室だった。・・・モデルの撮影会で使いそうなライトとかの機材を除けば。

「良いです・・・良いですよー。やっぱり私の目に狂いは無かったわ!じゃあ、次はスカートの端を軽く持ち上げて、お姫様がお辞儀をするようなポーズを」

熱狂的な声で、何かハァハァ言いながら青く長い髪の女性がゴツくて大きなカメラ片手に指示を出している。・・・元いた世界にあった大阪の同人イベントで、チェック柄の服で頭にバンダナ巻いたおっさんが似たようなヤツ持ってるのを見た事がある。一眼レフっていうやつかアレ?
と言うか、あのトリップしっぱなしで危険人物一歩手前な人、キャスターさんですか?



「あはは、キャスちゃんさっきからそればっかやんかー。えーと、こんな感じでええの?」



・・・・・・・・・。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え!?Σ(゚Д゚;)



キャスターの指示通りに可愛らしくポーズを決める女の子。つか、女。アマ。そして年齢不相応過ぎなちんまくて寂しいボディライン、約20数年腐るほど聞き慣れているその声。

「・・・・・・ねぇ七枷君、あの人って確か」

遠坂の声に耳は貸さない。意図的に背けさせていただきます。

「・・・確か、オレも見たことあるぞ。あの人って七枷の・・・」

あーあーあー!聞こえなーいっ!

「そう、そうですそんな感じがベストです。良いセンスしてますね七海さん

パシャパシャパシャッと、更にフラッシュを炊きまくって写真に収める若奥様。

「あ、あはは、あんま褒めんといてキャスちゃん♪おだてても何も出ーへんよ」

そうは言いつつも、満更でも無さそうな感じでポーズを決める幼女な身体の三十路越え。






どうみてもうちの母親です。



本当に・・・ありがとう・・・・・・ござい、まし・・・・・・・・・た。
・・・・・・ナニヤッテンダアノアマorz



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